オンライン=オンライン

とあるオンラインゲーム上でのお話。




ジェイド♂          青年タイプのアバター推定17歳、ジョブクラスはナイト。
(以下もジェイド)      声も思春期の青年をイメージ、とっても素直な子。
               主人公っぽく、ロールしている。
               中の人も同じ位の年齢で、精神年齢もそんな感じ。
               ですが、悪いギルドに所属してしまって、ちょっと心がすさんでいます。

ヒメリ♀           少女タイプのアバター推定16歳、ジョブクラスはウィザード。
(以下もヒメリ)       声は元気な子をイメージ、私ルール全開だけど、思いやりも持ち合わせている子。
               中の人は大人な女性だったり。色々経験積んでます。
               火属性広域上級魔法『インフェルノ』を使うのが好き。

正宗♂            熟練タイプのアバター推定50歳、ジョブクラスはブレイブナイト。
(以下も正宗)        声は渋い武士道な侍な感じで。プレイ暦も長くて、頼れるキャラ。
               中の人は渋いキャラのロールを楽しんでいる。

ヘイト♂♀          大人タイプのアバター推定25歳、ジョブクラスはアサシン。
(以下もヘイト)       声は両性チックなのをイメージ。意識して情報屋をロールしている。
               正宗とは長い付き合い、勝手に親分扱いしている。


グランガゼル♂♀       ガゼルタイプの上級モンスター。      (正宗との被り奨励)
(以下ガゼル)        プレイヤーキャラの4倍ぐらいのグラフィックを持つボス級モンスター。
               デカイ、硬い、強い。
               二足歩行で、ガゼルの頭、そして筋肉隆々。

システムボイス♂♀      ゲーム本体からのシステムメッセージです。 (ヘイトとの被り奨励)
(以下システム)       なんかこう、機械が発しているそんなイメージ。
               お昼のニュースを読んでいるニュースキャスターのような感じ。



配役表(2:1:1)



システム ヒメリさんが、ログインしました。

ヒメリ 「ちわー」

ジェイド「お、ヒメリちわー」

ヒメリ 「珍しいね、ソロで狩りなんて」

ジェイド「あぁ、今日はギルドのみんな来れないからお休みだな」

ヒメリ 「ならなら、一緒しない?新しく実装されたダンジョン、まだ探索してないのよ」

ジェイド「げげ、適正レベルより上じゃんアレ……。間違いなくデスぺナ喰らうだろ」

ヒメリ 「いーの、いーの。最後まで到達できなくてもイイじゃん、様子見だよ様子見!
     せっかく、運営ちゃんが仕事してくれたんだから、楽しまなくっちゃダメでしょ!」

ジェイド「いやー、うん。ソロで行け、ソロで……。」

ヒメリ 「高名なナイト様が、か弱くもカワユイこのウィズを見殺しにするのですか?
     名声値下げますよ、一日一回。ホーリーナイトは諦めた方がいいですね」

ジェイド「ちょ、お前!脅しかよ!!」

ヒメリ 「脅して何が悪い!」

ジェイド「色々悪いわ!!」

ヒメリ 「デウスの隠し通路ダンジョンへ、レッツゴー!」

ヒメリM 彼とは、初心者ダンジョン以来の付き合いだ。
     何気なくフレンド登録を交換し、今日まで楽しくプレイしている。

システム ダンジョン『デウスの隠し通路』第2層

ヒメリ 「インフェルノォォォォオオオ!!」

ジェイド「ちょ、おまえ!」

ヒメリ 「ふぅ、とりあえず殲滅完了」

ジェイド「ふぅ、じゃねえよ!ふぅじゃ!」

ヒメリ 「何か問題でもアーリマスカー?」

ジェイド「範囲魔法を。何の前触れもなく。ぶっ放して。俺を巻き込んでるんじゃない!!」

ヒメリ 「いいじゃん別に、ダメージが入る訳じゃないんだしー?」

ジェイド「それでも、硬直が起きるんだよ、硬直が!近接はリズムが大事なんだよ、
     殲滅できたからいいものを、何体か残ったら俺がやられて全滅してただろ!」

ヒメリ 「あー、ジェイドは細かいなぁ。リア友少ないんじゃないのぉ?
     こちとら、ぶっぱがしたくてウィズやってるんだから、ケチつけないでよねぇ」

ジェイド「ちょ……!おい、ヒメリ後ろ!」

ガゼル 「グワァァ!!」

ヒメリ 「な、グランガゼル?もしかして時間沸き?!」

ジェイド「下がってろ、俺が前に!」

ヒメリ 「ヤバ、マジ死ぬ」

ジェイド「スタンストライク!」

ガゼル 「グヲオオオオオオ!!」

ジェイド「早く下がって詠唱しろ!」

ヒメリ 「いや、チャット打ってる暇ないって!グランガゼルは、ショック耐性レベル1もってるんだよ?!」

ジェイド「へ?じゃあスタンにならな……」

システム ジェイドさんが戦闘不能になりました。
     ヒメリさんが戦闘不能になりました。
     パーティが全滅したので、デスペナルティ『経験値−10%』が適応されました。

ジェイド「あーやられた、グランガゼルつえぇ。一撃かよ」

ヒメリ 「上級者でも手を焼くらしいからねぇ、グランガゼル。
     ん、掲示板に書いてある。
     有効な状態異常をかけて、じっくり戦うのがセオリーらしいよ。
     基本的にあのダンジョンでは、相手にしちゃいけないタイプのモンスターだって」

ジェイド「なる、運がなかった訳だ」

ヒメリ 「てか……。インフェルノの術後硬直で動けなかったんですけど、私」

ジェイド「あーーー……」

ヒメリ 「動けなかったんですけどぉー」

ジェイド「うん、いい時間だし落ちるわ!乙!!」

ヒメリ 「うな!逃げるな卑怯者!!」

システム ジェイドさんがログアウトしました。
     パーティメンバーが2人以下になったので、パーティを解散します。

ヒメリ 「ま、久しぶりに楽しくつるめたから、いっか。」

ヒメリM そう、そんな彼とも、一緒に狩りに出かけたのは久しぶりのことだった。
     ある時期を境に、彼がギルドに入る前まではしょっちゅう一緒してたのだが……。
     それに、最近彼のギルドのよくない噂を聞く。

ヘイト 「また、大規模なPKがあったらしいぜ。」

正宗  「ああ、それなら知っておる。またアノギルドが吹っかけたのであろう?」

ヒメリM あ……、彼のギルドだ。

ヘイト 「ったく、酷いもんだよなぁ。大勢で襲い掛かって狩場を制圧しちまうんだから」

正宗  「みたいだな。気になったので、この前何人か引き連れて狩場のパトロールをした」

ヒメリM その日……私と一緒した日。

ヘイト 「へえ、それでどうだった?」

正宗  「いいや、何も起きんかったな」

ヘイト 「大方、格上の奴が出てきて、数でも敵いそうに無いから来なかったんだろ、趣味悪いな」

正宗  「らしい。絶対に勝てる状態で、相手を嬲るのを楽しんでいると聞いた」 嬲る(なぶる)

ヘイト 「酷い酷い。まぁ、長い間続くようならGM達がなんとかするでしょ。
     正宗サン、そんな気にかけていても仕様が無いって」

正宗  「今日もまた、パトロールを行う。ヘイト、主もゆくか?」

ヘイト 「あー。大体そうゆう事になる流れってのはわかってたから、あからさまに伏線引いといたのに。
     堂々と飛び越えちゃいますか……」

正宗  「む、何か言ったか?」

ヘイト 「行きます、行きます、一緒しますよ」

正宗  「うむ、では支度だな」





ヒメリ 「今日さ、暇かな」

ジェイド「あ……ああ、今日もギルドの集まりが無くなったから、暇だぜ」

ヒメリ 「じゃさ、こっちまで来てよ」





システム 大都市『ローレンス』中央広間。

ジェイド「なんだ、今日もアレか?デウスの隠し通路ダンジョンか?」

ヒメリ  「違う」

ジェイド「……じゃあ、なんだよ」

ヒメリ 「ギルドの活動、楽しい?」

ジェイド「……そりゃ……楽しいさ。楽しくなきゃ……やらねぇモン」

ヒメリ 「そう……だよね」

ジェイド「なんか、変だぞ?どうした、なんかリアルであったか?」

ヒメリ 「無いよ、リアでなんか問題があったわけじゃないの」

ジェイド「ん、でも何か違うぞ、お前」

ヒメリ 「……私と勝負して」

ジェイド「勝負って、PVか?」

ヒメリ 「うん、私が勝ったらギルド辞めて。私の狩りに付き合って!」

ジェイド「ちょ……、おま。いきなり、そんな横暴な……」

ヒメリ 「私が可愛くて我侭なのは、今に始まった事じゃないでしょ?」

ジェイド「そりゃ、そうだけど。いきなり何で……。
     ギルド決まったって、入れてもらえたとき。お前、喜んでくれたじゃんか!」

ヒメリ 「……聞いたの、貴方のギルドの事。PKの事。」

ジェイド「……それは。」

ヒメリ 「私は、我侭だから。私の親友がそんな事してるの許せない!ジェイドが悪く言われてるのが許せない!!」

ジェイド「ヒメリ……」

ヒメリ 「だから、正すの。私が」

ジェイド「わかった、受けるよ」

ヒメリ 「うん」

ジェイド「俺が勝ったら……。ん……勝ったら考える」

ヒメリ 「うん」

ジェイド「手加減無しだ」

ヒメリ 「わかった」

システム ヒメリさんが、決闘を申し込みました。
     ジェイドさんが了承したので、決闘場へと転送します。





ジェイド「詠唱させたらマズイな、速攻でいく!」

ヒメリ 「マジックショット!」

ジェイド「発動の早い基礎呪文か、だけど……その程度じゃ止まらない!」

ヒメリ 「ノックバック耐性の特殊装備?!そんな!」

ジェイド「スラッシュ!」

ヒメリ 「っくう!」

ジェイド「もう、ナイトの間合いだ」

ヒメリ 「そんな、速い!」

ジェイド「ストライク!!」

ヒメリ 「きゃぁぁああ!!」

ジェイド「コレで、決める。カラミティ・ラッシュ!」

ヒメリ 「っ!……ウィンブラスト!!」

ジェイド「くぁ!?ダメージは?少ないな。……吹き飛ばし属性か、距離が離れたな。」

ヒメリ 「今だ!セラミックバインド!」

ジェイド「な、消費アイテム?!動けないっ!……なんでこんな高価なものを?!」

ヒメリ 「何でも使うよ、勝つためには!」

ジェイド「たかが……PVなのに……」

ヒメリ 「ジェイドの為だよ」

ジェイド「…………!!」

ヒメリ 「インフェルノォォォォォォオオオオオオ!!!!」

システム 決闘の決着がつきました。通常フィールドに転送します。

ジェイド「負け……だわ。」

ヒメリ 「へへん、私のかちぃー」

ジェイド「なんか、もう……色々敵わないよ、お前には」

ヒメリ 「そりゃもう、ヒメリ様は、超完璧で超プリティーだからね」

ジェイド「約束だ、ギルド抜けるよ」

ヒメリ 「うん」

ジェイド「……俺さ、ギルド入ったときにさ、お前が『よかったじゃん!仲間が増えて!!』
     って喜んでくれたのが嬉しかった」

ヒメリ 「……うん」

ジェイド「それにさ、入ったばっかだし、ギルド……抜けにくくって、さ。」

ヒメリ 「うん」

ジェイド「言い訳みたいだけど、PVもPKも嫌だった……。」

ヒメリ 「そう、だったんだ」

ジェイド「すんげぇすっきりしたわ。あんがと」

ヒメリ 「ん、どういたしまして♪」

ジェイド「あと」

ヒメリ 「なに?」

ジェイド「なんか、不甲斐ない奴だけどさ。また、俺と一緒してくれよな」

ヒメリ 「もちろん♪」




ヒメリ 「ところでさ」

ジェイド「なんだ?」

ヒメリ 「ジェイドが勝ったら、どうしようとしてたの?」

ジェイド「あー、それは」

ヒメリ 「それは?」

ジェイド「それは……秘密だ」

ヒメリ 「えー、教えなさいよぉ。女王様の命令です!」

ジェイド「ったく、お前は本当に横暴だな」

ヒメリ 「我侭で可愛らしいお姫様の間違いじゃないの?」





おしまい。


台本置き場に戻る
---------------------ネットゲーム用語解説集---------------------

アバター:自分の分身となるキャラクター

ノックバック耐性:攻撃を受けた際の硬直が無くなる能力

デスぺナ-デスペナルティの事

ウィズ-ウィザードの略

硬直-操作を受け付けない時間

スタン-気絶状態

GM-ゲームマスターのこと、読みは「ジーエム」

PK-プレイヤーキルのこと、読みは「ピーケー」

PV-プレイヤーヴァーサス、読みは「ピーブイ」

吹き飛ばし属性:この属性を持つ攻撃がヒットすると、大きく距離を離されるというもの。
        つまり、吹き飛ばされる。


inserted by FC2 system